散切り枝垂れ
住むものもいなくなって、見るものすらいないのに、毎年、美しい桜を咲かす散切り枝垂れ。かつては、斜面に沿って、その幹よりも長く、満開の桜を風にそよがせ、枝垂れは枝垂れとして咲き誇っておりました。それなのに、ごみ処理センターの人が無粋に鋏を入れたものだから、あれから6年はたとうというのに、今もなお散切りのままです
ガレ猫のとーちゅけとびちゅこが生まれたときには、残念ながら、すでに散切りでしたけれど、枝垂れ桜は、to*vi*の祖母たちを優しく迎え入れ、to*vi*が公園をあとにするまで、猫たちをずっと見守り続けてくれました
猫向きエリア
赤い屋根の東屋は、雨よけにも日よけにもなりませんでしたけれど、見ず知らずの人が通りかかった際には、とっさに隠れられる植え込みがあり、植え込みの向こうには、凶暴な人や犬に襲撃された時には、逃げ込むのにうってつけな金網の塀が鉄塔の周りを囲み、野良猫に優しい仕様になっておりました
しかし、この公園は遊歩道的な目的を持って作られたようで、子ども向けの遊具はなく、川を背に二方を畑、もう一方は工業団地という人目を隠す立地、手入れの行き届かない木々や草いきれで鬱蒼とし、おまけに女の幽霊が出るという噂まであって、人っ子一人どころか野良猫すら寄りつかない有様で、長い間、地域の人々からは忘れられておりました
そんな公園に置いてけぼり
最初の住猫は人を呼ぶサビ猫でした。公園で「エリカ!エリカ!」と叫ぶ、三十代半ば、作業員風の男を目撃しております。そのときは、子どもを探していると思い、こんな子どもに不向きな公園で遊ばせるなんてと呆れたものですが、その後すぐにサビ猫を見つけ、交流を深めるにつれ、あの男のエリカはこの猫で、公園に捨てたのち、しばらくは様子を見に来ていたのではなかろうかと思うようになりました
何度か「エリカ」と呼んではみました。ニャーとは鳴きました。けれど、犬の前足やワタクシの後ろ足に、ごろニャンと顔を擦りつけながらのことでしたから、返事というより、人恋しさからくる鳴き声のようでした。でも、せっかくなので、エリカと呼ぶことにいたしました
エリカさまが人を呼び、エリカさまを目当てに人が行き来をすると、不思議なもので、エリカさまの周りには背の高い草は生えず、鬱蒼とした中にも生活圏が自然と拓けてまいります。やはり、人や猫、命あるものの往来は重要なのですね
エリカさま登場から2年
公園ののり面で、木枯らしに舞う枯葉にじゃれる黒のロン毛な猫と目が合いました。そのときに「ここは野良猫に優しい場所!」と思ったのでしょうか。翌日には3匹の猫を引き連れ、毎日、公園で過ごすようになりました
黒のロン毛♂、大きな渦巻のあるアメショー風♂と、普通のクロ♂とトラ♀。ちょっと毛色の変わった兄弟でした。エリカさまはおばあさまでしたので、群れることなく、1匹と4匹の生活がはじまりましたが、男子たちはさぼと長く公園には住み着きませんでした
春の終わりの珍現象
まずはロン毛君から。頭から首にかけて長い毛が抜け、普通の短毛に生え変わりました。その姿はまるで、フツーの黒猫が毛足の長い黒毛皮のコートを着ているようで、ちょっと滑稽だったのですけど、ロン毛は野良家業に不向きです
ずいぶん早く環境に対応したことには驚きましたけれど、それはとてもいい選択だと思いました。ドレッドになった毛束に触れたり、それがボトっと落っこちてきたときは └(゚ロ゚;)┘ ギャー!! 変な虫が寄生していたのかと肝を冷やしましたわ
次はアメショー風君。アメショー柄でも生きづらさは感じないはずなのに、むしろそっちがイケニャンのはずなのに、おなかの大きな渦巻が半分ほど抜けて、普通のトラ模様が出現したのです。こんなことってあるのでしょうか。生まれつきの柄が変化するって (。_゚)(゜_。)?
とても不思議な目撃でしたので、時がたてばたつほど、夢のような嘘のような出来事に思われてくるのですけれど、しっかりこの目で見てます。でも、その後、不思議な抜け毛が完了したかどうかは知りません。換毛が完了する前に、恋の季節が到来し、男子はみんな姿を消してしまったから
それから数年たって、黒のロン毛の野良を見かけました。そして、去年も1匹見かけました。あのロン毛君ではありません。でも、彼のDNAは生きています
初代カカ誕生
置いてけぼりのトラ子が子どもを産み、初代カカとなりました。最初に産んだ子どもはトラ♂♂、黒♂♀の4匹。その黒猫の1匹が二代目カカとなるto*vi*の母です。トラ子は立派な野良猫でしたから、きちんと年2回、人間には絶対見つからないところで赤ちゃんを産み、一か月半たって、離乳が完了すると1匹もしくは2匹の子猫を公園へ連れてきました
野良の赤ちゃんはすべてが子猫に育つことは難しい (T_T) でも、初代カカ・トラ子は強く凛とした野良猫として生き抜きました
TNRという言葉もまだ知らぬ時代でしたけれど、避妊手術も考えたこともあります。大勢の仲間がいればいいけれど、子ども産めず、一人ぼっちで生きていくことになったら、孤独なエリカさまを見ていただけに、公園に置いておくには忍びなく、何かできるその時まで、自然の摂理に任そう。そうと思って、何もできぬまま5年たち、トラ子は公園に戻ってこなくなりました
二代目カカ誕生
トラ子亡き後、カカが公園を受け継ぎました。カカは2回目の恋の季節で子どもを授かり、出産はしたものの子猫を連れてくることはありませんでした。その後は妊娠することはなく、初産の失敗から不妊になってしまったと思っていたのですけれど、トラ子がいなくなる半年ほど前に、黒猫のチビ太を授かりました
トラ子がいなくなり、2匹暮らしが続きましたけれど、恋の季節を迎えるごとに家族が増え、チビ太の次が黒猫ジュニア♂とたんぽぽ♀、そして、to*vi*、最後がソラとモモ、8匹の賑やかな大家族となりました
黒猫とトラ猫だらけのかわいい家族を、毎日愛でられることは、とても幸せでした。けれど、やはり1年半ぽっちの幸せ。野良の宿命から逃れることはできませんでした。いつの間にかチビ太はチビでなくなり、ジュニアも子どもではなくなり、公園を去り、ソラとモモは優しい飼い主さんのもとで幸せを見つけました。そして、たんぽぽは野ばらの茂みの中で、冷たい眠りにつきました
しのびよる悪魔
2015年4月には、カカとto*vi*の3匹暮らしになっていました。それでも、穏やかでのんびりした毎日を送ることができていました。でも、そのささやかな幸せは、悪魔のごみ処理センターによって、突如、壊されました。枝垂れエリアの植え込みをザクザクと、野良猫が隠れても、犬が首を、人が棒切れを突っ込めば、命中する薄さに刈り込みやがったのです
でも、まぁ、仕方がないです。ここは野良猫のための場所ではありませんから。野良猫排除ではなく、鉄塔の整備ための剪定だったのですから、それだけでもヨシとしましょう
でも、もうここでは生活はできません。カカたちの生活を、公園の真ん中にある立派な方の東屋へ移しました。そこは建物は立派なのですけれど、いざというときの隠れ場がない。見晴らしがよすぎるという欠点があって、カカたちは好んでいなかったのですけれど、愚かな人間ワタクシがソコへ移動させたのです
もっと早く、もっもっと
ここから人生の歯車は狂いだしていたのです。そのことに気づいていれば、もっと早く決断していれば、カカは犬にかみ殺されることはなかったでしょう。ワタクシに覚悟がなかったばっかりに、カカを幸せにしてあげることはできませんでした
カカとチビ太、2匹きりになったとき、あの寒い冬、2匹で丸まって眠っている姿を見て、何もしてあげられないとただ涙を流すのではなく、覚悟を決めていれば、今もガレ部屋で親子仲良く生きていてくれたでしょうに
5月12日で、カカが亡くなって4年になりました。写真は1枚もありません。公園に置いておくしかないのに、写真を撮って、思い出にしようなんて、とても卑怯なことだと思ったから、写真は撮れませんでした
カカは物静かで控えめな美しい黒猫でした
エリカさまは、とても長く公園で暮らしました。ほとんど動かなくなったエリカさまは、最初から気にかけてくださっていた方に引き取られ、しばらく穏やかに暮らしたあと、優しいご夫妻に見守られながら、静かに息を引き取りました
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